起業して店を出すのって、ギャンブルに似てない?

なぜ「店を出す」のか

周りの友人たちを見ていると、会社勤めに嫌気がさしたり、一旗揚げたいと考えたりして、会社を辞めて起業する人が何人かいます。彼らとビジネスのアイデアについて話すと、大抵は「店を開く」ことからスタートしようとします。

実際のところ、みんなの感覚では、店を開くことは「起業」ではなく「商売(商い)」と呼ばれます。「商売」という言葉なら、大きなビジネスもあれば、小さな商売もある。もし誰かに「会社を辞めて小さな商売を始めるんだ」と言えば、とりあえずやってみるんだなと思われますが、「会社を辞めてデカいビジネスをやる」なんて言えば、十中八九「詐欺にでも遭ったのか?」と疑われるでしょう。

ただ、店を一軒出すというのは規模が小さすぎて、世間一般が抱く「起業」のイメージとはギャップがあります。みんなが思い描く起業は、会社を設立して、ゼロから大きく成長させ、最終的にはジャック・マー(馬雲)のようになるという、胸が高鳴るようなストーリーです。「起業する」と大見得を切ったのに、実はただ店を一軒出しただけだと知られたら、なんとなく格好がつかないものです。

どうやって店を出すか

普通はまず、「誰からお金を稼ぐのか」を決めなければなりません。例えば飲食業でも高級店と大衆店があります。新築マンションの近くに安い定食屋を出せば、客層は内装職人や建設作業員になるでしょう。逆に都心で高級な日本料理店を出せば、客層はホワイトカラーの会社員になります。

ターゲットから本当にお金を稼げるかどうかは分かりませんが、一つ確実なのは、大家さんは大喜びするということです。あなたのせいで、大家さんの収入は安泰なのですから。

一般的に、開店の最大コストは家賃と内装費です。これらをクリアした後は、商品の仕入れ・販売・在庫管理、そしてスタッフの雇用と教育が待っています。多くの飲食店を見てきましたが、スタッフ教育が全くできていない店が目立ちます。正確にはスタッフではなく、ただの「手伝い」レベルです。結局、スタッフがワンタンをテーブルまで運ばないといった些細な理由で、いつの間にか店は潰れてしまいます。

自分で店を出した多くの友人と話し、実際に店を観察してきました。タピオカ屋、日本料理店、アイスクリーム屋、ハンバーガーショップ、コピー店、菓子店、写真スタジオ、旅行代理店、コンビニ、不動産仲介、子供向けの習い事教室……。最終的に生き残ったのは、菓子店だけでした。

なぜ死亡率が高いのか?

素人の多くは、店が儲かるまでのプロセスを単純化しすぎています。店を借りて、内装を整えて、商品を並べれば、自然と客が来ると思い込んでいるのです。客が自分を養ってくれるかどうかは運任せ。「もしかしたら店がバズるかも」なんて期待して、年収1000万超えを夢見ています。

こうした認識で店を出すから、開店が「ギャンブル」になってしまうのです。家族から600万〜800万円ほど借金し、完璧なフローも考えないまま、「一丁やってやるか」と勢いだけで突っ込みます。少しでも遅れたら市場を他人に奪われる、とでも焦っているかのように。

大抵の場合、失敗の原因は「よく分からない設備」「素人同然の内装」「原材料の供給トラブル」「膨れ上がる家賃」「バカな共同経営者」「使えない店員」、そして「根拠のない熱意だけで飛び込んだこと」に集約されます。

新米が十分な調査もせずにこの業界に足を踏み入れれば、結局は「ゲームオーバー」になる運命なのです。

ギャンブルに似ていないか?

私に言わせれば、どんな業界であれ、店舗経営は株式トレードによく似ています。例えば、詳細もよく分かっていないのに店を出すのは、勝手な思い込みで「この株は上がる」と踏んで買い(ロング)を入れるようなものです。そう、開店とはその店に対する「ロング」であり、しかも中国株のように「買い」しかできず、「空売り(ショート)」ができないゲームなのです。

ただし、店と株が決定的に違うのは、株なら下がった時に「損切り」ができる点です。1000万円分の株が900万円に下がった時に損切りすれば、損失は100万円で済みます。しかし、店に1000万円投じた場合、その店を買い取ってくれる相手(カウンターパーティ)なんてそう簡単には現れません。そうなれば、待っているのは「強制ロスカット(破産)」です。

こう考えると、金融トレードもそれほどギャンブルには見えてこないでしょう? 起業した人が「これなら株をやってた方がマシだった」と気づくのは、こういう理由からです。金融の視点で見れば、店を出すことは「流動性の低い資産をロングすること」であり、かつ「損切りが極めて困難な状況」に身を置くことなのです。

安易に「簡単そうに見える業界」に飛び込もうとしている友人たちを、私は引き止めたい。もし自分が賢いと思うなら、まずは株や仮想通貨を試してみればいい。そっちの方が簡単です。「買い」と「売り」のボタンが二つあるだけで、チャートは全世界共通。その「透明かつシンプル」な市場で、果たして自分がお金を稼げるかどうか、試してみることです。