もし中国で育った子供が、必死に働いて数百万(元)貯めたとする。それが親にバレたら、十中八九「家を買え」と言われるだろう。
「持ち家」への執着
僕はこうした執着を、一言で「不安全感」と呼んでいる。中国では家に紐付いているものが多すぎるからだ。教育、医療、戸籍……。これらがあるせいで、多くの人、特に親世代は「家を持ってこそ大都市に足場を築いたと言える」「家があってこそ家庭だ」と思い込んでいる。
しかし、不動産価格がかなり下がった今でさえ、普通のサラリーマンや一般家庭出身の若者にとって、その価格は依然として恐ろしいレベルだ。
もちろん、中国には「義母経済」という言葉もある。義理の母が求める条件、つまり「家と車」を男が用意できなければ、結婚すらおぼつかない。
中には「一生賃貸でいい、そうすれば(国や資本の)カモにされずに済む」と開き直る若者もいる。だが、その道を選んだ後に何を突きつけられるか、彼らは理解しておく必要がある。
- 親からの「結婚しろ、子供を作れ」という圧力
- 相手の親からの軽蔑
- 親戚一同からの陰口
- その周囲からのさらに執拗な陰口
- 「借りる側」と「持つ側」の権利格差による、いつ追い出されるかわからない不安
- 子供ができた時の戸籍や学校の問題
こうした攻撃を何度も何度も跳ね返せる自信があるなら……君は本当に大したものだ。
だが、住宅購入とそれに紐付く全ては「陽謀(公然の罠)」であり、大多数の人にとって、これは解きようのない詰みゲーなのだ。
住宅購入はギャンブルか?
この問題はよく議論されるが、僕は金融トレードの視点から分析してみたい。
仮に手取り月収が1万5000元で、500万元の家を買いたいとする。親に泣きついて頭金30%(150万元)を出してもらい、残りの350万元を銀行から借りる。
ローン計算機で、元利均等返済、金利3%として計算してみよう。
毎月の返済額は約1万4000元、それを30年続ける。総返済額は531万元だ。つまり350万借りて、531万返す。30年間の利息は約181万元。言い換えれば、30年かけて181万元を余分に「寄付」するわけで、年間平均6万元のコストだ。
月収を覚えているだろうか?1万5000元だ。給料のほぼ全てがローンに消える。生活費は、まともな奥さんを見つけて助けてもらうしかない(まだ子供の教育費は入れていない)。
この時点で家を買うということは、その家を「ロング(買い)」するレバレッジ契約を結んだのと同じだ。管理費などを無視しても、30年のローンが残っている以上、現物を所有しているとは言えない。これは30年間の「無期限先物コントラクト」であり、君に問題が起きない限り、銀行が強制決済(ロスカット)することはない。
年収を24万元(月1.5万×16ヶ月分)とすると、レバレッジ後の理論値である531万元に対して、約22倍のレバレッジをかけていることになる。22倍なんてほぼギャンブルだ。現物が5%下がれば、本来なら証拠金割れで破綻するレベルだ。(もちろん、このレバレッジは年々下がっていくが)。
ここで一点、見落としていることがある。「対戦相手(カウンターパーティ)」は誰か?デベロッパー?違う、銀行だ。君が家をロングしている一方で、銀行は君の人生をショート(空売り)している。
銀行の視点に立てば、一人の人間が30年間、一度も災難に遭わない確率は極めて低い。君や家族が重病を患うかもしれない。突然失業するかもしれない。生活に異変が起きるかもしれない。社会的な大災害や、業界の構造的な失業が起きるかもしれない。
神の視点から見れば、生産手段を持たない中産階級が、こうした突発的な衝撃に抗うのは不可能だ。しかし、卒業したてで意気揚々としている若者たちは、往々にして短視眼的で、「努力で階級上昇を成し遂げた」と無邪気に信じ込んでいる。
結びに
金融トレードの世界では、多くの人が「試合の途中でシャンパンを開けて(勝ち誇って)」自滅する。もしトレードで破産したなら、また入金して一発逆転を狙うこともできる。運が良ければ解決するだろう。
だが、もし人生が「強制ロスカット」されたら、元本を取り戻す術はない。なぜなら、君の青春はもう、どこにも残っていないのだから。
